江戸時代後期の儒学者、佐藤一斎の「言志晩録」にある言葉です。
「物無ければ 則ち 其の人を見ず 即ち是れ 勇なり」と続き、
「人は無我の境にある時には、その身を忘れて正義感のみが存在し、物欲の念がなければ、眼中人なしで、ただ勇気だけが存在する」と教えます。
 心が真っ直ぐで、自我や物欲という雑念が無ければ、そこにあるのは義と勇気。人としてそうした心構えを持ち、実践せよと教えられます。
 平成30年5月29日付の朝日新聞夕刊に、「4歳救出『スパイダーマン』は不法移民」と題した記事が掲載されました。
 西アフリカ出身の若い男性が、パリ北部のマンション5階のベランダの手すりにしがみついて落ちそうになっている男の子を見つけ、地上から各階のベランダに飛びついては、懸垂の要領で体を引っ張り上げて5階に到達し、無事、男の子を救出した記事が掲載されました。
 この様子を撮影した動画がインターネット上で拡散し、高い身体能力と危険を顧みない勇敢な行動に、「スパイダーマン」との賞讃が相次ぎました。後に、この青年は、前年フランスに入国したものの、許された期間を過ぎて滞在していることが明らかになりました。