これは、江戸時代中期の儒学者、荻生徂徠の「徂徠訓」にある言葉です。
徂徠は市場経済の浸透が、やがては伝統的な人間関係を揺るがすことを指摘したことでも知られています。
「人の長所だけをとればよい。短所を知る必要はない」
という、この言葉は、何事も効率優先の現代社会にあって、性急な結果を求め、とかく他人の短所に目が行きがちな悪習を戒めているかのようです。
去る三月末、公益財団法人日本生産性本部は今春の新入社員の特徴を、「何事も安全運転の自動ブレーキ型」と発表しました。頭の回転が速く、情報収集能力にも長け、人を傷つけない安心感があるという反面、困難な壁があれば、ぶつかる前にブレーキをかけるところを、自動車の自動ブレーキ装置になぞらえたものです。
情報収集能力が高いという強みが、逆にリスクを恐れ、前向きに挑戦する気概に乏しいという弱みの原因にもなっているのでしょう。
こうした傾向のある最近の若者に対して、ある企業の経営者は、
「若手社員には教えてやるという上から目線の態度ではなく、一人前の社員として接することが早期戦力化のコツ」
と語っています。
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