江戸時代の儒学者、佐藤一斎が著した「言志四録」に見られる言葉で、
「何事も、自分の本分としてしなければならないことは、敢然とこれを為すべきであり、避けていてはならない」という意味です。
 本分とは、自分が果たすべき本来の責任、尽くすべき義務のこと。忙しくて時間がないから、困難な課題だからといって人任せにしたり、先延ばしにしたりすることは、問題をさらに大きくし、取り返しのつかない後悔をすることになりかねません。
 平成29年12月、博多駅発、東京駅行の新幹線「のぞみ」が、走行中に発生した異常音と異臭のため、名古屋駅で運転を取り止めるトラブルがありました。調査の結果、台車部分に亀裂があったことが判明し、一つ間違えば、脱線し、大事故につながるところでした。
 博多駅を出発した時から車掌が異常を感じ、岡山駅から乗りこんだ三人の車両保守担当者が異常の広がりを確認した上で、指令員に新大阪駅での車両床下点検を提案しましたが、指令員は、指令長から報告を求められて受話器を耳から外し、この提案を聞き逃したといいます。
 検査のチャンスを失った「のぞみ」は、異常を抱えたまま名古屋駅まで運行し、その間、乗客およそ一千名の命が危険に晒されることになりました。