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  • 今月の言葉 1頁




 昭和の日本を代表する小説家である司馬遼太郎が、小学校用教科書のために書き下ろした『二十一世紀に生きる君たちへ』の中で語った言葉です。
 人間は孤立して生きられるようにはつくられていない。それ故に、氏は、
「自分に厳しく、相手にはやさしく」という「自己」の確立と、お互いの助け合いが必要だといいます。その助け合いのもとにあるのは、「いたわり」や「他人の痛みを感じる」という感情。それを訓練して身につけることは、人間が生きていく上で、いつの時代にも欠かすことのできない心構えだと教えます。
 令和4年6月27日付の朝日新聞朝刊に、「共生」と題して、「世界人助け
指数」という国別ランキングで、日本が114の国と地域の中で最下位だったことが報じられました。
 この指数は「過去1ヶ月の間に見知らぬ人を助けたか」「寄付をしたか」
「ボランティアをしたか」を聞き取り、集計したもので、日本の人助け指数が低い理由として「格差社会で人助けをする余裕がないこと」「自己責任を叫ぶ声の強まり」が挙げられています。
 後者の「自己責任」とは、助けを求める根本原因が、本人の選択の結果であり、責任は本人にあるとする考えのことです。昨今、この風潮が強いそうですが、全てを「自己責任」と切り捨てるのは人間の本質からずれており、自分自身が「助けを求める人であった可能性」に気づき、言葉や食事、自然の恵みや先人の営為を「ありがたく受け取ることで生きている」と知る人間観が大切であると結んでいます。