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 この男性には、子供も孫もいますが、「相続しすぎると独立心が育たない」「財産を遺すよりも若い方に渡した方がお金が生きる。そこから新しい発明や発見が出て、日本が栄えて行けばいい。あの世に行ったときは財産ゼロという死に方をしたい」と考え、妻の賛同を得て、財産を寄付することを決めたそうです。九州大学では、この寄付を基に奨学金制度をつくり、学生の留学費や海外渡航費に充てるといいます。
 この男性の充実した人生と潔さに、心洗われる思いがします。
『六方礼経』に、父母が子供を育てる際のあるべき姿として、
「一、悪を去り善に就かせようと念い、
 二、計算や書籍を教え、
 三、経戒を持つよう教える」と説かれています。
 子供の心の在り方次第で、与えた地位や財産などは、どうなるか分かりません。伝え遺すべきは正しく生きる智慧と、その実践から得られる安心です。世に、「子は親の背中を見て育つ」といわれます。私たちの姿が、未来の子供たちの姿にも反映されることを肝に銘じなければなりません。



文・南 省吾

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