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 当時、小学3年生で、友人の家にいた女性は、避難を渋る友人の祖父母を説得し、高台に登って難を逃れました。「避難場所や危険な場所を覚えていて、焦りはなかった」と語ります。
 人は誰でも自分に都合の悪い情報や危機を過小評価する「正常性バイアス」を持つといわれますが、先人の教訓は、そうした偏った認識を正し、日々の危機への備えを促してくれます。
『出曜経』に、
「生死を畏れずして放逸に過ぎなば、後に畏れを来すべし。畏れずば畏れ、畏るれば畏れず」
として、死を恐れていなくともいつか恐れが生じ、日頃から恐れていれば、本当の恐れはないと説かれるように、死の準備を怠る怠惰や憍慢は、やがて取り返しのつかない悔いを生みます。
「一寸先は闇」ともいわれる世の中で、私たちは、悔いのない、幸せな人生を目指して、日々、励むことが大切です。誰にでも訪れる死は、突然にやってくるものです。尋常という「今、この時」にこそ、その時に備えておかなければなりません。



文・南 省吾

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