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 偽ニュースが拡散し、社会を動かす力を持つ理由として、人は正確さよりも自分の立場を補強してくれる情報に吸い寄せられる傾向が強いこと、不満を持つ者同士が引かれ合い、SNSで情報共有が可能になったことを挙げて、結局のところ、「利用者が情報の内容を見極め、偽拡散を防止する責任を負う」という専門家の意見を紹介しています。何よりも懸念すべきことは、罪悪感を持たない嘘の発信者が増え、受信者である私たちも嘘に慣れてしまうこと。そして他人だけでなく隣人や家族、自分の心や真実真理さえも信じることができなくなる世界の到来です。
 聖徳太子の『法華経義疏』の中に、「智慧とは鑑照を義と為す」という文言があります。「鑑」とは、ものの姿を映す鏡や手本のこと、「照」とは、照らし合わせることです。つまり、「智慧」とは、あるがままに物事を受け止めて、善悪の判断を加えることであると教えます。
 人の心に潜む欲や執着は、真実よりも自分に都合のよい情報と解釈で、その人の判断を誤らせます。誰もが持つそうした弱さを自覚して確かな智慧を身につけたいものです。詰まるところ、世間は、五濁悪世の世界です。本当の智慧は、御仏の教えに従い、善い行いを実践し、自身の心を鏡のように磨くことで養われるものなのです。



文・南 省吾

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