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 芝生と土のコントラストが見事な甲子園のグラウンドを整備する「阪神園芸」の職人集団には、かつて「甲子園の土守り」と呼ばれる、土を熟知し、グラウンドを我が子のように慈しんだ名キーパーの存在がありました。
 名キーパーと言われる人たちは、グラウンド整備に細心の注意を払い、選手にいいプレーをしてもらうための労を惜しみません。試合中、土や芝生の僅かな乱れが致命的なミスやケガに繋がり、勝敗や選手の将来を左右しかねないからです。土の僅かな凹凸をも見逃さない整地、最適な長さを探求し、ミリ単位の正確さで刈り込む芝生、刻々と変化する土を相手に、天候や選手の要望に応じて最適なコンディションのグラウンドを作り上げる。
 そうしたキーパーの苦労を誰よりも理解し、感謝しているのは、プロ野球選手たちです。プロが認めるプロの仕事をするキーパーに仕事の理想を尋ねると、「選手に迷惑をかけないこと」「ボールが普通に転がること」と謙虚に答える裏方としての姿勢がありました。
 私たちもまた、身の回りの多くの支えに感謝し、素晴らしい未来に花を咲かせるのための「土」になろうではありませんか。




文・山野 泉

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