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 「堪」とは苦しみに堪えること、「忍」とは怒りを抑えることです。
 この諺は、「堪忍の徳は得難いものであり、堪忍は一生の宝として大切にすべきだ」という意味ですが、同時に、
「逆境にある時、それを受け入れて堪え忍ぶことが、如何に難しいか」ということも示しています。
 平成27年9月21日付の読売新聞に、水俣病の患者であり、水俣病資料館の「語り部」であった杉本雄さんを追悼する記事が掲載されました。
 水俣病は、化学工業会社が水銀を含んだ廃液を海に流したことで引き起こされた、中毒性中枢神経疾患を伴う公害病で、多くの地域住民と胎児までもがその被害を受けました。当時は原因不明の病であり、発症すれば手足のしびれ、言語障害や歩行障害を伴うことから、奇病、伝染病として扱われ、患者は謂れのない差別といじめを受けました。
 水俣病を発症した杉本さん夫婦は、生業としていた水俣湾での漁も禁止されて、生活は困窮を極めます。そのため、損害賠償を求める訴訟に参加しますが、この化学工業会社に暮らしを依存する人たちからの風当たりは想像以上で、食料や薬さえ売ってもらえず、一家は野草を摘んで飢えを凌ぎ、死を考えたこともありました。そんな時、世間からの冷たい誹謗中傷に立ち向かう勇気を与えたのは、雄さんの義父が遺した、
「決していじめ返しはすんなぞ。 水俣病も『のさり』だと思え」
という言葉でした。

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