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 年老いて、寂しさに耐えかねたシカは、幼いころ習った字を一生懸命思い出しながら、英世に手紙を送りました。
「おまイの しせ(出世)にわ みなたまけました 
わたくしもよろこんでをりまする
ドか(どうか)はやくきてくだされ
はやくきてくたされ はやくきてくたされ
いしよの(一生の)たのみてありまする…」(抜粋)
 たどたどしく書かれた一文字一文字から、母親の子を思う深い愛情が滲み出ています。この手紙を受け取ってから三年後に、ようやく帰国した英世には、全国から講演の依頼が殺到しました。
 英世は、長らく寂しい思いをさせた母親と少しでも一緒にいようと、シカを講演に連れて行ったのです。
 歓迎会の宴席で、母親に寄り添い、「お母さん、これはカツオのお刺身ですよ」「お母さん、松茸のおつゆですよ」と料理を食べさせている姿に、周りの人々は感動し、涙したそうです。
 自分を産んで、一生懸命に育ててくれた父母に孝養を尽くすことは、釈尊の説かれた四恩の中でも最初に掲げられており、人の道として「当たり前」の行為といっても過言ではありません。今一度、自分自身の存在を振り返り、父母の恩に報いるべきであると存じます。

文・嶋 徹伸

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