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 氏のライフスタイルは質素そのもので、大統領公邸ではなく郊外の農場に住み、外遊はエコノミークラス。私的には、給料の9割を慈善事業に寄付し、その残りで生活費を賄い、30年ほど前に友人たちから贈られた自家用車を愛用し、その生活ぶりは一般市民と何ら変わらないといいます。氏はさらに、会議の場で、人々が経済的豊かさの追求に汲々とする間に年老い、やがて一生を終えていくことを憂い、
「発展は人類に幸福をもたらすものでなくてはいけない。愛情や人間関係、子供を育てること、友だちを持つこと、そして必要最低限のものを持つこと。これらをもたらすべきなのです」
として、生きる意味と喜びとは何かを問うたのです。また、初来日の目的を「日本国民は幸せなのか。人として達成感を得ているのだろうか」ということを確かめるためだと語り、私たちの幸福感を鋭く問うています。
 釈尊は、『無量壽経』の中で、人というものは、財産があれば、それを失うことを怖れ、なければそれを求め、執着の中で苦悩し、仏道を行おうとしない、と嘆いておられます。寿命が尽きれば、現世であれほど執着した何ものも持っていくことを許されず、たった一人でこの世を去らねばならぬ我が身です。本当の幸福とは何か、人間として生まれた目的は何なのかを、今一度、考えてみるべきではないでしょうか。



文・南 省吾

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