HOME > 珠玉の言葉 本棚 > 本棚09 1頁


 この言葉は、『老子道徳経』第二十七章にあります。「轍」は車輪の跡、「迹」は馬の足跡のことで、車や馬を上手に走らせる者はその痕跡を残さない、つまり、すぐれた政治家の統治の有様は目に見えないということを表し、しばしば、
「社会に貢献するような立派な仕事を成し遂げた人ほど謙虚で、その苦労の足跡を残さない」という意味に使われます。
 今年4月、アメリカの首都ワシントンのポトマック公園で、春の恒例イベントとなった「桜まつり」が開催されました。この公園の3700本もの桜は、明治時代に日本を訪れた紀行作家、シドモア女史の、「アメリカの人たちに日本の美しい桜を見せたい」という発起に、当時のアメリカ大統領が賛同し、日本政府が桜の寄贈を決めたことに遡ります。
 桜の寄贈を託された当時の東京市長は早速、桜2000本をアメリカに贈りましたが、ワシントンに到着した頃には、夥しい数の害虫が発生し、焼却を余儀なくされました。そのため、日本で病気や害虫に強い桜の苗木が開発され、1912年に再び、3000本を超える苗木がアメリカに寄贈、植樹されました。
 桜の植樹の成功率は低く、枯死せず、花を咲かせるようにするためには、土壌造りや病害虫に対する長期的な手入れが大切です。それはワシントンでも例外ではなく、桜が花開くまで、どれだけ多くの名もなき人々が心を尽くし、地道な努力を重ねてきたのか、その苦労のほどは想像するに余りあります。





本棚09 2頁