HOME > 珠玉の言葉 本棚 > 本棚19 2頁


 あるホテルの社長は、「偽装とは故意に人を欺くこと。お客様を欺く意図を持って不当な利益を得る意識はなかった」と記者会見で釈明しました。購買部門と調理部門のコミュニケーションの悪さというホテル側の事情はさておき、顧客の期待を裏切ったということは間違いのない事実です。それでも「偽装ではなく誤表示」と、個人の保身や組織の利益優先の姿勢が見え隠れする発言は、社会の大きな反発を招きました。結局、社長は職を辞し、さらに消費者庁による立ち入り検査を受けるに至っては、長年にわたって積み上げてきたホテルのブランドも信用も大きく失墜しました。
 今回の食の偽装問題に対して、消費者が強く求めるものは再発防止の決意と、それに取り組む「自浄」の姿勢です。事実は事実として謙虚に謝罪し、真剣な再発防止の善後策を講じていれば、記者会見の発言も異なったものになっていたに違いありません。


 仏教には「如実智」という言葉があります。自らの欲望や執着、感情といった「私心」に捉われず、あるがままに真実を知る智慧のことです。この智慧によって、心から過ちを悔いた後、さらに皆の前で自らの過ちをさらけ出し、二度と同じ過ちを犯さないことを誓うのが仏の道です。
 人間は、自分の過ちを悔いてはいても、保身や立場といった私心に妨げられ、なかなか素直に過ちを認められないものです。仏道はその心をも正していくのです。
 私たちの歩むべき正道は、ここにあります。


本棚19 1頁