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 一陣の風が吹いたのはその時です。強風は、全ての灯を消し去り、法座を真っ暗闇に陥れたかのように見えました。ところが、何と老婆の小さな灯だけは消えず、朝まで静かに玉座を照らし続けていたのです。
 釈尊が、その灯こそは、老婆の信仰心の表れであると仰せになると、その場に居合わせた人々は自らの憍慢を恥じたということです。
 布施はその心にこそ意味がある。 
 現在残されている多くの寺院も、当時の信徒の方々による日々の倹約と、何かさせて頂きたい、という清浄な心をもって建立されました。
『諸徳福田経』は、伽藍建立の功徳を、
「転輪聖王(理想的な優れた王)に生まれること三十六回に及び…食も幸福や財産も自ずと備わり何不自由しない」と説き、その莫大さを讃えます。前述の老婆もまた、尊い一灯の布施により、天界に生まれたと伝えられています。
 形の大小よりも、そこに込められた心と費やされた努力が大切であることを教えられます。

文・嶋 徹伸

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