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 元来、トヨタ自動車には、社祖豊田佐吉氏の創業の精神を明文化した「豊田綱領」があります。そこには、「至誠業務」「質実剛健」「温情友愛の精神」「報恩感謝」といった、人と社会に奉仕するという使命感が謳われており、この精神を基にトヨタ自動車は、徹底した品質管理を愚直に行ってきました。
 ところが、時代の流れと共に、急激な海外展開や、開発期間の大幅な短縮、巨額の費用がかかるF1参戦など、急速に拡大路線に走りました。これが、これまで慎重に実施してきた製品段階での品質検証を疎かにさせた、との見方もあります。
 しかし一方で、当時の対応が、過去最多規模のリコールとなるにも拘らず、早い段階で決断されたことを高く評価する声もあります。トヨタ自動車が、「創業の精神」に目覚めたというのです。
 信頼性とは眼に見えない、「心」の問題であり、それにたとえ莫大なコストがかかろうとも、あらゆるものに優先すべき大切なものだということを物語る事実といえるでしょう。私たちもまた、自分の「心」が正しい方向に向かっているか否か、常に検証する必要があるのではないでしょうか。




文・嶋 徹伸

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