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 しかし、その翌日、彼女が出した結論は失敗という結果を恐れずに、目指してきた演技をすること、そして演技を通じて、彼女を支えた人たちに恩返しをするということでした。
 自身を奮い立たせ、演技に集中しようとする心が、土壇場で本来の力を最大限に発揮させたのでしょう。自身が納得できる最高の演技を見せた、彼女の喜びの笑顔と涙は、日本だけでなく、世界の人々に大きな感動を与えました。1日目の失敗、2日目の成功という違いの理由は、心の持ち方にあります。


 仏教で「有心の心」とは、心が妄念に囚われて、身も心も硬直した状態のことをいいます。妄念煩悩に囚われまいと努力しても、それがまた心の自由を妨げる結果になるのです。煩悩や執着を離れて無私になるということは、大変困難なことです。
 釈尊は『観普賢菩薩行法経』に、
「人間の心根は猿のように、少しの間も停まる時はない。もし心を抑えたいならば、経典を読誦し、仏の姿や、力、恐れなき心を常に念ずることである」
と仰せです。
 浅田選手は自らの勝敗にこだわらず、心が解き放たれた時、力みがなくなり、本来の演技に繋がりました。私たちも、迷うばかりの己の計らいを捨てることで、真の幸福な人生を歩むことができるのです。


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