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 お茶と水で一昼夜をしのいでいた糖尿病患者が、このおにぎりで命を救われたことから「命のおにぎり」として知られるようになりました。
「仮設で厳しい暮らしをしているだろうに、こうして人助けをしてくれるなんて、頭が下がります」という感謝の言葉に、炊き出しをした女性は感激し、
「震災からこれまで、私たちは数え切れないほど多くの人に助けられてきました。今回のことで、また明日から頑張ろうと私たちにも励みになりました」と涙ながらに語りました。
 その地では、農業と畜産を生業とし、避難に際しては、家族同様の牛と泣く泣く別れた酪農家も多いといいます。そうした理不尽な被害を受け、逆境にあっても、人を慮る優しい心とその実践が、明日に向かって生きる活力と糧になることを教えられます。
『未曾有因縁経』には、
「苦厄の人を見て、ために救護を作し、皆、その所を得しむるを慈心という」と説かれています。
 順境にあろうが、逆境にあろうが、変わりなく慈しみの心を持ち、素直な実践を心がけること。それが人の道ではないでしょうか。「お互い様」と助け合い、感謝できる存在でありたいものです。



文・南 省吾

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