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 高速化実現の要となる車両台車は、構成要素である車軸、軸バネ、ダンパー等、その組み合わせだけでも五万通りあり、気の遠くなるような回数の実験とシミュレーションを繰り返して最適な設計条件が求められたといいます。
 また、試運転や発生した初期トラブルに対しても、徹底的な原因究明がなされ、天候や人的ミスを含めて、想定し得る全ての条件を「シラミ潰しに潰し尽くして」運行規定や検査規定が定められました。
 開業以来の乗客数は延べ56億人。その上、事故死者ゼロという成功の影には、困難な課題に決して倦むことなく、「あらゆる道筋を潰さないと『できない』とは断言できない」と技術者たちを励まし、安易な推論や妥協を排した技師長の強い責任感と覚悟があったといいます。
 新幹線の成功の影には、こうした人々の努力を惜しまない情熱と、失敗から学ぶ知恵があったのです。
 仏教では「因果の道理」で、結果には全てそのようになる原因があるとし、日々の努力を怠っていては、善の種を蒔くべくもなく、かえって自らに潜む悪のために、苦を免れることはできないと教えます。
 私たちはまず、一つずつ努力を積み重ね、善の種を蒔くことが大切です。
 たとえ失敗したとしても、そこから得る経験や学びは決して小さくないはずです。成功の影に失敗はつきもの。どんな時でも前を向き、そして悔いることのない人生を歩みたいものです。



文・南 省悟

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